|
貨物の流れ
商品の値段は売主が商品そのものの値段とどこまでの経費を負担するかによって大幅に違ってきます。ですから値段を確認する場合、「建値(たてね)」はどう設定されているかを明確にしておく必要があります。ま、詳しくは各パートで。
1. 貨物の出荷から積み込みまで
作 業 内 容
ステップ1 売主(製造者もしくは輸出業者)は注文に応じて商品を準備します。
同時に売主は通関に必要な書類(船積書類)を準備し、通関業者に渡します。
ステップ2 普通売主は自分で準備の出来た貨物を運\ぶことはしませんから、配送業者に貨物を保税倉庫まで運\んでもらう手配をします。
配送業者は指定した場所まで貨物を運\びます。
ステップ3 貨物が保税倉庫に搬入されたことを確認したら、通関業者は売主から入手した書類を基に通関作業に入ります。
ステップ4 通関が切れたら(輸出許可が下りたら)、運\送手段(船もしくは飛行機)に積み込む事が出来るようになります。
ステップ5 積み込みが終わったら、運\送会社(船会社・航空会社)からそれを証明する運\送状(船の場合B/L)が発行されます。
それを通関業者は売主に届けます。
<建 値>
EXW (EX Works : 工場渡し) : 商品
商品代金のみでその他一切の経費を売主が負担しない。 つまり、売主の貨物引渡し義務は売主の工場、倉庫等で履行される。
この場合、買主は相手国での国内運\送費用、通関費用、積み込み費用等この貨物を動かすための一切に費用を負担しなければなりません。
但し、この場合運\送方法などは買主に決定権があります。
引き渡し後の貨物の危険負担は買主に移る。
FOB (本船渡し) : 商品 + 配送費 + 通関費用
商品代に加えて、貨物が積み込みが完了するまでに一切の費用を売主が負担する場合。
つまり引き渡し義務は貨物が船の手すりを越えた時(積み込みが完了した時)に終了する。
売主には国外での運\送方法の決定権はありませんので、買主が指定した船、もしくは航空機に載せる手配をします。
(注:ここで言う通関費用とは輸出許可を得るための手続き費用と、積込費用をも含んでいると考えてください。)
危険負担も積込が完了した時点で買主に移行する。
2. 運\送途中
作 業 内 容
ステップ1 売主は、貨物が日本に届くまでに船積書類(1-5で入手した運\送書類を含む)を買主の元へ何らかの方法で送ります。
(ここで「何らかの方法で」と言っているのは、支払方法によってその書類の送付方法が違ってくるからです。)
船の場合は運\送所要日数がかなりありますから、近隣アジア諸国からの場合を除いて、貨物到着前に書類を入手することは可 能です。
航空機利用の場合、積込後、即日~2,3日で貨物は到着します。
そのため、書類は売主の手を経由せずに、同じ飛行機に搭載されてきます。
もし、売主から航空会社、便名、貨物の番号(AWB#:エアウェイビル番号)を知らせてくれないと、貨物が到着した後暫く買主 は貨物の確認が出来ず、通関作業へ入れません。 そのため、買主は売主に対し、その情報をすぐにもらえるように依頼します。
ステップ2 船の場合、入港の1週間くらい前に船会社からARRIVAL NOTICE (アライバル・ノーティス/到着案内)が届きます。
もし買主のほうで保険をかけなければならない場合、到着案内に記載されている海上運\賃/航空運\賃に基づいて保険填補依頼を 保険会社にします。
<建 値>
CFR (運\賃込み条件) : 商品 + 配送費 + 通関費用 + 海上運\賃
輸出国内費用に加えて、輸入国までの運\賃をも売主が負担する。
この場合、海外輸送に携わる運\送会社は売主が決定する。
但し、貨物の危険負担はFOBと同様、積み込みが完了した時点で買主に移転する。
CIF (運\賃込み条件) : 商品 + 配送費 + 通関費用 + 海上運\賃+保険料
輸出国内費用に加えて、輸入国までの運\賃と保険料を売主が負担する。
つまり、2-2で説明の買主による保険填補は不要。
この場合、海外輸送に携わる運\送会社と保険会社は売主が決定する。
保険条件がどのようなものかは事前に確認しておくべき。
但し、貨物の危険負担はFOBと同様、積み込みが完了した時点で買主に移転する。
必 要 書 類
貨物を輸出→輸入する場合、実際に貨物を一個一個調べて内容を確認し、手続きを行うわけではありません。
まずはその貨物を表している書類を調べ、何らかの問題がある場合に実際に内容点検することになります。
ですから売主は必要な書類を正しく作成、もしくは入手して買主に渡さなくてはなりません。
輸入通関時に最低必要な書類は4点です。
① INVOICE (インボイス:商業送り状) : 売主が作成
買主に対し、輸出貨物の明細を示す書類であり、かつ代金の請求書の意味を持つものです。
ここで記載される項目は、 商品の内容・数量・単価・合計金額・建値などです。
届いたインボイスの確認項目は
○ 売主(輸出者)のサインがあるか。
○ 買主(輸入者)宛てに作成されたものであるか。
○ またL/C(決済方法の一種)に基づいている場合は、商品内容がL/Cと一致しているか。
L/Cで要求されている部数発行されているか。 (L/Cについては後日解説)
貨物の出荷前に支払いを要求された場合は、このインボイスの到着を待って支払い手続きをとるということは出来ません。 また、その前に支払準備をするのにも出荷前に内容を確認しておくことが必要です。
そのために、買主が発注したのに、売主は内容を確認し「セールス・コンファメーション」か「プロフォーマ・インボイス」というこの内容で出荷しますよと示した書類を発行します。 その内容はほとんどインボイスと同じ物となります。
(注:ほとんどと言っているのは、出荷直前に変更がある場合もあるし、記載内容を簡略化する場合もあるからです。
② PACKING LIST (パッキングリスト:梱包明細書) : 売主が作成
商品の包装や数量・重量を記載したものです。
包装とはカートンなのか、袋なのか、木箱なのか、またその1単位に入っている商品とその数量、その1単位の重量、容量を示します。
なお、売主によってはインボイスとパッキングリストの内容を一つにまとめた形式のインボイスを発行するところもあります。
③ B/L, AWB (船荷証券、航空貨物運\送状) 船会社や航空会社が発行
船会社もしくは航空会社が貨物を引き受けた時に発行されますが、B/LとAWBでは性格が異なります。
B/L(Bill of Lading =船荷証券)は船会社が貨物を船積み地点で受け取ったことを証明し、指定地点まで運\送し、その荷揚げ地でB/Lの正当な所有者に貨物を引き渡すことを約束した有価証券です。 裏書により流通性が生じます。 つまり、これを紛失すると貨物を引き取れませんので、売主・買主共に十分な注意が必要です。
一方、AWB (Air Waybill = 航空貨物運\送状)は航空貨物の受取証として航空会社もしくは混載業者が発行するものです。 受取証に過ぎず、B/Lと違って有価証券ではありません。
上記の詳細については専門書にお任せすることにして、貨物追跡について少し説明します。
毎日莫大な数の貨物が動いているわけですから、○○社の貨物はどうなっています?なんて聞いても対応し切れません。 それで、B/L、AWBにはそれぞれ番号が付けられています。 貨物が引き受けられた後は運\送会社はその番号で貨物を管理しますから、問い合わせをする際はこの番号を使用します。 なお、航空貨物運\送状の場合、混載業者が発行したAWBにはマスター番号(MAWB#)とハウス番号(HAWB#)の2つがついていますから、両方を通知しなければなりません。
④ 保険証券 (Insurance Policy :インシュランス・ポリシー) 保険会社発行
これは取引条件がCIFの時は売主が入手して他の書類と一緒に買主に送付します。
買主が保険填補する場合は、買主再度の保険会社に依頼して発行してもらい、輸入通関時に他の書類と一緒に提示します。
****************
これ以外にも商品によっては以下のような書類が必要になります。
原産地証明書
重量容積証明書
分析証明書
燻蒸証明書
領事送り状 等
国際宅急便・郵便を使う
国際宅急便も国際郵便も売主の近くの集荷場所に引き渡したら、
売主側の国内運\送・通関手続き
海外運\送
買主側の通関手続き・国内運\送
を経て、買主指定の場所まで配達されます。
必要書類は貨物と一緒に運\ばれます。
費用は売主(プリペイド)か買主(コレクト)のいずれかに請求されます。 その選択は貨物を引き渡す時に指定します。
通関時に関税・輸入消費税が発生した場合は配達時に買主に請求されます。
関税と消費税以外は国内の宅急便と同じようなもので、
売主が持ち込まなくても引き取りに来てくれます。
通常の流れと比べての利点は :
1. 少量の貨物が運\べる。 フェデラルエクスプレスの場合貨物は500g単位で課金
2. 手続きが簡単。 (書類も各社が所定書式を用意、それに記入。)
3. 航空機利用のため所要日数は通常1週間前後。
4. コンピューターで貨物を管理しているのでインターネットで貨物の状況を調べられる。
(但し、郵便の場合はEMS扱いの時のみで、その追跡可能国は限定されている。)
貨物の追跡は貨物引取りの際に作成した書類の写しに記載されている追跡番号(トラッキング番号)で行います。
小さい貨物の場合は本当に便利で、正式発注の時もよく利用しています。
但し、ある程度の量になると航空便を使って通常の手続きを取った方が経費を押さえられる場合がありますので
その分岐点を頭に入れて使い分けるといいでしょう。
国際宅急便と郵便の使い分け
日本の場合、国際郵便には船便、航空便、EMS(国際スピード郵便)があります。 船便ですとどんなに近い国でも2,3週間を要し、その割にはそんなに安くないのでまず除外してもいいでしょう。
もし郵便を使う場合はEMSの使用をお勧めます。
その理由は次のようなものでしょうか。
○ 日本発送で航空便とEMSを比べた場合、EMSを使用したほうが安いようです。
○ 制約はありますが、貨物の追跡ができるのはEMSだけです。
○ 航空便は時として間違って船便にされてしまう場合あり。 その場合、貨物の行方は到着まで追跡不能。
こう書くと、だったら全部航空便ではなくEMSにすればいいと思われるでしょう。 でも、EMSを使うには事前に登録して登録番号を取得する必要があります。 (無料、登録はその場でもOK―登録に必要なものを事前に確認のこと。)
(↑この件に関しまして,郵便局の方からご指摘を頂きました。平成12年4月10日より,登録番号の取得が必要なくなったそうです。 新しい送付状には番号を記載する場所はないそうなのですが,以前の形式モまだ使用されていますので,もしかしたら,担当局員によっては取得を要求されるかも・・・・? )
また、EMS扱いそのものがない国や、別の名称で取り扱っている国があります。 私の場合、EMSが使用できない国では国際宅急便を使用しています。
国際宅急便と郵便(EMS)の使い分けの目安としては、
○ 書類の場合は確実に郵便のほうが安くなります。 但し、EMSより宅急便のほうが到着は早いようです。
○ 貨物の場合、日本発の場合はEMS仕様が一番安い料金設定です。
しかし、国によっては宅急便の方が安い国も結構あるようです。
○ 郵便の場合重量制限を越えると運\べません。 (日本からの発送は国によって20kgか30kg)
宅急便の場合は(航空便輸送と比べると)割高になりますが、重量制限はありません。
○ 追跡システムが整備されているのは宅急便の方。
○ 宅急便は発払い・着払が選択できるが、郵便は原則発払い。
国際宅急便にはDHL、フェデラルエクスプレス、UPS、TNTなどがあります。 それぞれの地域によって得意・不得意があるようで運\賃に差が出ますので、費用を負担しなければならない場合はいくつか見積もりを取ってみるといいでしょう。
仕入先のコンタクト
この作業は法的規制の確認の前に行うことが多いかもしれませんね。
商品選定の際に、輸入可能かどうかは判断できるものが多いですから。
これは先方にこちらの取引の意向を伝え、より詳細な情報を得ることを目的とします。
展示会の場合は、その場でここで必要としている内容のほとんど入手できるので手間が省けます。
買主側からのアプローチの際伝えることは次のようなものです。
① 取引の意向
② 買主情報 (取扱商品、対象市場、網羅地域等)
③ 希望商品群のカタログ、価格表、取引条件の請求
④ 売主側の会社情報、今後の連絡担当者等の情報の請求
商品や会社の情報の入手はもちろんのこと、先方とのやり取りの中で協力度合いを判断することも大切です。
最初にあまり協力的でないところが後でとても協力的になるってことはないですから、取引を始めて問題が起こったときに協力が得られそうであるかどうかは最初のやり取りである程度判断できます。 但し、お国柄によって表現方法が異なり、ぶっきらぼうだからといって非協力的とは限りません。
サンプル請求
商談が進むと、サンプルを請求します。 先方の持っている商品そのものを少量輸入する場合で、すでに現物を手にとって確認できている場合はともかく、多量に取る場合は現物を確認しなければ危険です。 特に、デザインや仕様、色の変更を買主側から要望した場合、それが要求どおりに行われているかどうかの確認は絶対条件です。
食器などの場合、検査の為のサンプルを事前に取ることも、前述したとおりです。
この際、サンプルの送付方法、サンプル代金に支払いの確認、サンプル送付時期などもちゃんと確認します。
サンプルをちゃんと確認する前に本オーダーが売主の手元を離れたのではサンプル確認の意味がありませんから。
原価計算
サンプルが届いたら、商品の品質と価格をチェックします。
日本市場での販売に見合うように、取引条件(価格・数量)を売主と交渉することも必要になって来るでしょう。
もし、商品の仕様変更など特別なリクエストがある場合はこの時点で行い、必要ならば再度サンプルを請求します。
先方の国内費用、運\賃などを負担する必要がある場合は関係個所に問い合わせてその費用を確認します。
全ての諸掛を考慮に入れて、原価及び小売価格を算出します。 このとき、少しは許容幅を持たせておかないと為替の変動や予期せぬ検査などで損することになりますからご注意を。
取引締結
正式発注の場合は次のようなことを発注書に記載します。 最後に署名することも忘れないで下さい。
発注後は発注内容がちゃんと受諾されていることを確認するために、受注確認書(セールス・コンファメーション)か受注書(プロフォーマ・インボイス)を売主に要求します。
取引 売主・買主
発注日付
商品名 正確な商品名
品番がある場合はそれも正確に。
その他、商品を限定するのに必要な情報は記載。
品質 品質条件の取り決め。
(見本・仕様書等で規定)
数量 単位(個数・包装単位・重量・容積など)
注文量
過不足容認条件
価格 建値
通貨
単価
決済 決済方法
その他条件
保険 保険者・被保険者
保険期間・填補範囲・保険金額
船積み 船積み時期
仕向・被仕向港
輸送経路
貨物の積出方法
支払方法
支払方法としては次のようなものが考えられます。
クレジットカード
送金小切手
普通送金
電信送金
信用状なし荷為替手形決済
信用状付荷為替手形決済
貿易というと信用状付荷為替手形決済(通称L/C決済)を理解することは絶対必要ですし、どんな貿易解説書でも詳しく説明しています。 また、全ての貿易書の解説はその取引がL/Cに基づいているものという前提での解説であることを理解してください。
|
|